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2007年05月20日

●その日のうちに落ちる花のように

 朝、テトラスクロールに、花びらを並べる。
 一枚、一枚、敷居にそって並べていく。
 丁寧に、丁寧に、花びらに意識を集中して並べていく。


 20年ほど前だろうか、始めてのバリで見た、祈りの花の美しさが、今も忘れられない。

 花で知られる南房総だが、美しい花のあしらいを見ることは滅多にない。

 きっとそこには、何かが欠けているのだ。


 それは、たぶん、「祈り」だろう。

 朝、バナナの葉に盛りつけた供物をそなえる時も、寺院で祈る時も、バリ島の人たちは必ず両手の指さきに花びらをはさんで合掌する。シヴァ神に、ヴィシュヌー神に、先祖たちに、それぞれ赤や黄や白の花を使いわけて祈るのだ。祭や儀式の時は、いっせいに合掌する人々の指さきで、無数の蝶が舞っているように見える。それは私の知るかぎり、世界中でバリ島にしかない祈りの作法である。その日のうちに落ちる花のように人は生を享けて、苦しみ、悲しみ、喜び、考え、意識し、願い、そんな営みすべてを花のように顕現させ散っていくだけなのか。バリ島の人たちの指さきの花は、ぞくぞくするほどなまめかしく、きよらかで、私の眼には世界で最も美しいものの一つに映る。

この、花一輪がなければ 宮内勝典「バリ島の日々

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