●人間は生まれた日からこわれていく。
五木寛之「養生の実技」から。
養生と治療はどこがちがうのか。
人間観というか、思想がちがうのだ。治療という考えかたの背後には人間は本来、調和のとれた理想的な身体をもって生まれてきた、という感覚がある。
機械でいえば、燃料さえ補給してやれば、万事、快調に動くのが当たり前と考えているのだ。そこに異常が生じる。故障をなおすように治療をおこなう。修理が終われば機械はもとどおりに快調に動作する。
私の人間観はそうではない。人間は生まれた日からこわれていく。老いるとは、そういうことだ。しかも、不自然で、非合理な部分も数かぎりなくある。神秘的といえるほどすばらしい働きもそなえながら、同時になんとも情けない幼稚な部分もある。
そこを苦心して、少しでも良いコンディションをたもち、故障をおこさないように工夫するのが、養生ということだろう。
